物理の成績向上に必要な要素とは
大学受験物理は、化学や生物などと違って、いわゆる暗記に頼る科目ではないと考えます。
よって勉強方法としても、物理においては暗記に頼るような勉強をしないことが大事です。
私が考えるに物理の実力とは、どれだけ現象を図式化できるかということと、公式の意味を理解できているかで決まってくると思っています。
図式化とは、図にあらわして、現象に則した正確な式をたてることです。
もちろん、力学において図にあらわすことについては、やりやすいかもしれませんが、電磁気や波動など、目に見えないような現象をいかにわかりやすい図にできるか、ということもポイントとなってきます。
そして、物理で正確な式をたてれるようになるためには、公式の意味を理解できていなければいけません。
それぞれの公式のそれぞれの文字には必ず意味があります。その意味をじっくり吟味する必要があります。
よって、物理は公式の丸暗記では決して本当の実力はつきません。このようなことからも、数学に近い科目です。
例えば、波動の分野で基本的な以下の式があります。
@ v=fλ
A λ=vT
少し変形すれば、この2式は同じものなのですが、それぞれの式の意味を考えながら立てることができるでしょうか。つまり、それぞれ
@1秒間に進む距離(速さ) = 1秒間に波打つ回数(振動数) × 1回の振動で進む距離(波長)
A1回の振動で進む距離(波長) = 1秒間に進む距離(速さ) × 1回の振動に要する時間(周期)
となります。
このように、単なる文字の羅列である式に、意味をふきこむことで、本当の意味を理解でき、複雑な問題にも柔軟に対応できるようになります。
以下に物理のそれぞれの分野での勉強法について書いていきます。
・力学の勉強法
力学については、力のベクトルなどの正確な図が描けるかどうかで決まってきます。
正解を導くための50%以上を占めるといっても過言ではないかもしれません。
それぐらい大事なものなので、実際に解く際は、大変な注意をはらいます。
例えば、図1のような典型的な斜面台上に小物体が「静止」している問題があったとします。
このような問題で、全ての力のベクトルを1つの図の中に書き込むと、相当見にくくなります。
これでは、間違いの元にもなりかねません。
そこで、面倒でも、図2のように、それぞれの物体に分けて考えます。
つまり、もともとある図を使うのではなく、自分の手で物体同士を離した図を描いてみることです。そして、それぞれの物体に働く力のベクトルを描きます。
そうするだけでも、だいぶ見やすくなりますし、必要なベクトルを見落とすことが少なくなります。
この例では、物体は斜面上で静止しているのですから、それぞれの物体に働く力はどの方向にもつりあっていることになります。
そういう目でみることによって、たとえ忘れていたとしても、「ああ、そうか、静止摩擦力"f"が働いているな」と一目で考えることができるわけです。
ちょっとしたことですが、とても重要です。
そして、後は、ベクトルをみながら力の式をたてていけばいいのです。
ちなみに、右の例でいえば、
・上側の小物体についてのつりあいの式
mg cosθ= N1 (斜面鉛直方向)
mg sinθ= f (斜面方向)
・下の斜面台についてのつりあいの式
Mg + N1 cosθ= N2 (鉛直方向)
f cosθ= N1 sinθ (水平方向)
となります。
・波動の勉強法
物理の波動の分野は、音波、光波、気柱、弦、干渉、ドップラー効果など、それぞれ独立した式があるため、それぞれの場合をそれぞれの式であてはめて対応するように考えがちですが、それでは少しレベルの高い問題やひねった問題が解けなくなります。
ここで重要なことは、波動の基本式にたちかえって考えることです。
例えば、ドップラー効果で図3のような問題があったとします。
典型的な問題で、「このときに観測者に直接届く音の振動数f' を求めよ。」という問題ならば、教科書にも書いてある式を使えば解けます。
しかし、例えば「直接届く音と、反射板をはね返った後の音の波長をそれぞれ求めよ。」というような問題があると、たちまち解くことができなくなります。
このような場合、波動の基本に戻って考えなければなりません。つまり、図4のように、音源が動くことによってできる波面を描いてみて波動の基本式から波長を考えます。
この問題については、動いている音源を基準に式をたてると、
・音源の進行方向: V-vs= f λ1
・音源の後方方向: V+vs= f λ2
これによりそれぞれの波長がでることになります。
・電磁気学の勉強法
・回路の問題はわかりやすく自分で回路図を描き直す
物理の電磁気の問題で定番の回路に関する問題についてです。
よく問題と一緒に図のようなものも用意されていて、その図を使って考えてしまいがちになります。
しかし、問題を噛み砕くためにも、自分でもう一度回路図を描いてみることをおすすめします。
とはいっても、ただ単にもともとある図を写したり、思い込みで描くのではなく、なるべくシンプルに、なるべくわかりやすく描くことが必要です。
また、回路の問題でよくある、スイッチの開閉により状況が変わる問題(例えば図1)では、状況が変わるごとに図を描き直すことも、おすすめします(図2)。
図を描くのに時間がかかるじゃないか、と思うかもしれませんが、状況が変わると一つの図では考えにくい場合もあり、ミスや間違いのもとになりかねません。
ここはやはり、少し手間でも、それぞれの状況に応じてそれぞれの図を描いてシンプルな理解の助けにした方が無難だと思います。
・電磁気での基本は電位の式
電磁気の中の回路の問題の中には、かなり複雑でややこしい問題もあります。
しかし、そこでうろたえてはいけません。どんな複雑な問題も、基本的な電位の式を考えることで解決することが多いです。
自分で描いた回路図を参考に、なるべくシンプルに電位の式をたてていきます。
この電位の式をたてるうえで、考えることは一つ、
「回路は1周すると電位差0」
ということです。
当たり前のことと思うかもしれませんが、電磁気で状況が複雑になってくると、何をやっていいかわからなくなるときがでてきたりします。
そのような状況でも、おちついてまず基本式からたてていくと、すんなり解けたりすることも多くなります。
〈どう解いたらよいかわからない、という人に〉
・コンデンサ入りの回路では電荷保存を考える
電磁気での回路にコンデンサが含まれるとき、電位の式に加えてもうひとつ重要なことは、電荷の保存を考えるということです。
電磁気でのよくある定番の問題が、
「スイッチ1を入れて、また切って、スイッチ2を入れて、また切って・・・」
のような問題です。
このような状況では、銅線が接触せずに孤立しているような系に、各プロセスごとに電荷の保存についての式をそれぞれたてます。
このような電磁気の回路問題は、一見複雑に思えるのですが、電位の式と電荷の保存を考えていけば、簡単に解くことができ、しかも、一回解法になれてしまうと、いろんなパターンの問題にも対応できるようになると思います。